今回はアキレス腱断裂についてのリハビリについて解説していきます。
整形外科に勤めていると少なからずリハビリする機会がありますので確認しましょう。
目次
アキレス腱とは
アキレス腱とは「下腿三頭筋(腓腹筋・ヒラメ筋)」が合わさり、踵骨隆起に付着する人体最大かつ強靭な腱です。※約15cmと言われている。
最大の腱にもかかわらず、血流が乏しく、痛みが出ると難治性に移行しやすい。
アキレス腱の由来はギリシア神話に登場する英雄アキレウスから取られています。
アキレス腱断裂とは
アキレス腱断裂は外傷で生じるものが多く、過度の衝撃や伸張が引き起こされ断裂する急性発症と退行変性や慢性的な繰り返しのストレスが原因で断裂する慢性断裂が存在します。
30代から40代にかけてのスポーツ習慣者で発症が多く、受傷時にはバチっとした大きい音とともに、ふくらはぎに大きな衝撃が走ります。その後、強い痛みに襲われます。
この時よく言われるのが、「後ろから蹴られた」「ボールがぶつかった」などです。
断裂後は、地面に足がつけなくなり、アキレス腱部に凹みを確認することができます。
アキレス腱断裂になりやすい人は?
やっぱり部活動などのスポーツ選手に多いです。
特にバドミントン、バスケット、テニス、バレーなどの種目で多いと報告されています。
また、30代後半の中年のスポーツマンが昔運動していたからと急に激しい運動をして受傷することも有名なことです。
急に完全断裂する例もありますが、2週間くらい前から痛みがある部分断裂受傷者が完全断裂に移行する場合も珍しくありません。※全体の20%に前駆症状ありとの報告。
アキレス腱断裂の症状
主に以下のような症状が確認することができます。
・アキレス腱部に「バンッ」と強い衝撃が走り、激痛を伴う。
・つま先で立つことが困難になる。(歩行は可能な症例も存在する)
・アキレス腱部に凹みが確認でき、圧痛を伴う。
・シモンズテスト、トンプソンテスト陽性
・部分損傷では数週間後には完全断裂の可能性がある。
部分断裂、完全断裂ともに適切な処置を怠ると、断裂部が瘢痕形成となり、慢性的な痛みが生じることもあります。
アキレス腱断裂の脆弱部位
①アキレス腱断裂の多くは、血流の乏しい部分(アキレス腱付着部より約4〜6cm上方)に好発します。
②筋腱移行部が次に多い。
③踵骨付着部はまれですが存在します。
アキレス腱断裂の合併症
手術療法
外科的手術のため、感染による合併症が問題となります。再断裂の危険性もあり。
保存療法
保存療法では再断裂率が手術療法よりも高いと言われています。
両者のメリット・デメリット
保存療法
メリット:即日治療開始可能。術創がないため、感染のリスクがない。
デメリット:長期固定(6〜10週)による、筋萎縮、深部静脈血栓症発生の可能性が高い。
過延長、再断裂率が手術に比べて高い(20%未満)。
手術療法
メリット:早期荷重歩行可能。再断裂率が保存より低い(10%未満)。
デメリット:感染症の危険性が高い。入院治療が必要で費用が高い。
アキレス腱断裂の鑑別テスト
有名なところで、
「シモンズテスト(Simmonds test)」と「トンプソンテスト(Tompson test)」があります。
シモンズテスト(Simmonds test)
アキレス腱断裂を診断するための検査。
トンプソンテスト(Tompson test)
アキレス腱断裂を診断するための検査。
参考動画
受傷後、歩行可能の人もいるので、整形外科テストと陥凹の確認は最も重要です!
アキレス腱断裂の治療・リハビリ
アキレス腱断裂後の治療法には保存療法と手術療法があります。
保存療法
受傷し断裂した腱を近づけるために、足関節最大底屈位(40〜50度以上)にして膝下からのギプス固定を行います。
荷重は軽度の部分荷重OK。
受傷後5週目からは足関節軽度底屈位で、ヒール付きギプス固定として全荷重歩行を行います。
受傷7週より約1ヵ月間は短下肢装具を使用し、足関節節の自動運動訓練を開始します。
受傷11週目で装具を外します。
手術療法
瘢痕安定期:ope後3〜6週間(部分荷重の開始)
再構築期:ope後6週間以降(全荷重の開始)
①アキレス腱術後は、縫合腱の過伸張防止に配慮すること(最重要)。
②後足部荷重では下腿三頭筋の収縮が入らないため、ヒール付きギプスでの荷重を早期から取り組むこと。
瘢痕未成熟期:ope後〜2週間
この時期はアキレス腱に負荷がかかるトレーンングは望ましくないです。
この時期はとにかく組織への血流量を増やしていきことが重要です。不動により血流障害が生じしまう可能性があるので、皮膚や術創部周囲軟部組織の滑走性向上を行なっていきます。
瘢痕安定期:ope後3〜6週間
この時期からは補高を踵の下に入れて荷重練習を行なっていきます。同時に下腿三頭筋の筋力訓練も開始していきます。徐々に高さを減らしていき、アキレス腱への負荷を高め、伸張性を上げていきます。
※背屈可動域訓練の時は原則膝関節軽度屈曲位で行なっていきましょう。
再構築期:ope後6週間以降(全荷重の開始)
この時期から全荷重開始。両脚つま先立ち(heel raise)も取り組んでいきます。
スポーツ復帰期:5〜6ヶ月以降
この時期にはスポーツ完全復帰が期待できる。
この時期には修復した腱組織は成熟し、再断裂の可能性は極めて低いが、疼痛や腫脹などの炎症症状の強い症例や極端に筋力低下がある症例では、腱組織の成熟が低い可能性もあります。必要があれば、MRIなどの画像診断を踏まえた上で慎重にスポーツ復帰を検討していきます。
補足
一般的には第一選択として、手術療法が行われる。
高齢で非競技者のケースでは保存療法で行われることもあるが、手術例と保存例ではどちらも受傷6ヶ月後時点での結果には差がないと言われているため、手術が適用されることが多いです。
活動的な患者さんであれば、より手術療法を第一選択にしている印象が強いです。