現在は整形外科クリニックで勤務し、医療サイトを2つ運営、勉強会団体の運営にも携わっています。
みなさん、下記のようなお悩みはありませんか?
効果的な角度ってどのくらい?
そもそも腱板筋群って?
今回は、このようなお悩みを解決できる記事になっています。
ここで紹介する『肩関節リハビリー腱板筋群(ローテーターカフ)の効果的な筋トレ角度』を読むことで、残存腱板や術後腱板を選択的にトレーニングする方法を知ることができ、臨床推論を深めるキッカケになると思います。
僕自身、臨床で腱板筋群をトレーニングする際に意識する部分です。
みなさんも要点だけでも覚えて、臨床で生かしていきましょう!
・腱板筋群をトレーニングしなければならない理由
・腱板筋群の機能
・腱板筋群効果的なトレーニング肢位
それでは内容に入っていくのですが、
そもそもなぜ腱板筋群をトレーニングしなければならないのか?
について確認していきましょう!
目次
腱板筋群をトレーニングしなければならない理由
肩関節においての腱板筋群。
いわゆるローテーターカフ(棘上筋・棘下筋・小円筋・肩甲下筋)は肩関節の安定化機構として上腕骨頭を関節窩に引きつける作用があります。
肩関節においてのインナーマッスルと捉えると理解しやすいと思います。
このローテーターカフの働きによって、肩関節周囲筋で生み出された力のベクトルを関節窩の中心に向け、骨頭の安定した支点を作り出しています。
この機能に不具合が生じると、骨頭求心位を保つことが難しくなるため、肩関節を効率的に動かすためには十分な機能を維持しなければなりません。
そのため、五十肩で痛みを訴えている人や腱板の手術後の人、部分断裂をして腱板が脆弱している人も含めて、残存している腱板筋を鍛えていかなければなりません。
棘上筋の作用
棘上筋は腱板の上面を形成しており、その作用は肩関節の外転と上腕骨頭を関節窩に引き寄せ、安定した支点を作り出すことです。
起始 | 棘上窩 |
停止 | 大結節上部と関節包 |
作用 | 外転・外旋および骨頭の引きつけ |
棘上筋が有している肩関節外転作用はそこまで大きいものではありません。
その理由は上腕骨頭中心から停止部までの距離が短いためです。
そのため、肩関節外転運動では三角筋に依存している形になります。ですが三角筋の作用のみで外転を行うと、上腕骨頭を関節窩へ引きつける作用が不十分のため、上腕骨頭が変位してしまい、肩関節のインピンジメントが生じてしまいます。
つまり、肩関節外転運動を遂行するためには、棘上筋の支点形成と三角筋の強力な回転モーメントが協調して作用することが求められます。
棘上筋には前部線維と後部線維が存在し、少しばかり機能が異なります。
前部線維が肩関節の内旋に作用し後部線維が肩関節の外旋に作用します。
棘上筋の生理的横断面積において70%が棘上筋の実質部の前1/3に集中しています。
また、肩関節の挙上運動時にも棘上筋腱の前1/3で最大荷重、最大応力、弾性係数が高いと言われています。
これらのことから、棘上筋の中でも前部線維が肩関節の運動において重要な部位ということが考えられますね。
棘下筋の作用
棘下筋は腱板の上面から後面を形成しており、肩甲上腕関節の安定化において重要な筋肉になります。
起始 | 棘下窩 |
停止 | 大結節中部と関節包 |
作用 | 外旋 上部線維(横走線維)→外転 |
下部線維(斜走線維)→内転 |
表のように棘下筋が棘上筋と同様に外転作用を有しております。この棘下筋の作用は棘上筋よりも高い可能性を秘めています。
正常の肩関節の屍体を用いた研究で棘上筋の切除で39%、棘下筋の切除で63%外転トルクが減少するという報告もあります。
このことから棘下筋の方が外転に作用している可能性が考えられますね。
外旋の筋出力の中でも棘下筋は各角度に応じて作用が異なってきます。
1st position (肩関節下垂位)では上部線維(横走線維)の方が伸張されるため、この肢位で上部線維が一番外旋に発揮します。
肩関節の外転や上腕骨頭の前方偏位、上腕骨の下方変位にも作用します。
2nd position(肩関節90°外転位)では下部線維(斜走線維)が伸張されるため、上部線維よりも下部線維が強力に外旋に作用します。
肩関節の外転や上腕骨頭の前方偏位と肩関節の水平伸展にも作用します。
3rd position(肩関節屈曲・外転90°位)では棘下筋全体が伸張位となり上腕骨頭の求心力も高まるが、ベクトルの変化から外旋よりも水平伸展の作用が強くなります。
ちなみに3rdでの外旋作用は小円筋がメインで発揮されます。
小円筋の作用
小円筋は腱板の後下面を形成しており、支持形成力により肩甲上腕関節の安定化に働いています。
起始 | 肩甲骨外側縁後面 |
停止 | 大結節下部 |
作用 | 外旋 |
棘下筋とともに外旋の作用を有しているが、小円筋の外旋力は3rd position(肩関節屈曲・外転90°位)で最大になります。
1st position → 2nd position →3rd positionになるにつれ、外旋の作用が強まってきます。
小円筋は後方の関節包と結合しています。これにより、肩関節の外旋運動時に後方関節包の挟み込みを防ぐ働きを有しています。
モーメントアームの特徴もあり、屈曲伸展のモーメントアームの関係と内転外転のモーメントアームに関係があります。
小円筋は下垂位で大きな伸展モーメントアームを有していますが、屈曲角度が徐々に増加し、屈曲110°では肩関節屈曲モーメントアームに変化する。
外転0~40°でわずかな内転のモーメントアームを持ち、外転40°以上になるにつれ、外転モーメントアームは増大する。
つまり、0~40°では大きな伸展作用とわずかな内転作用も持ち、40°以上の挙上位では伸展作用と外転作用を持つと言えます。
肩甲下筋の作用
肩甲下筋は腱板の前面を形成しており、肩甲上腕関節の安定化に働いています。
起始 | 肩甲骨前面の内側縁(肩甲下窩) |
停止 | 小結節、小結節稜上部 |
作用 | 内旋 |
・棘上筋・棘下筋・小円筋は羽状筋の構造だが、肩甲下筋は、複数の筋内腱から構成される多羽状筋の構造をしています。
・内旋作用の肩甲下筋の横断面積は外旋筋である棘上筋・棘下筋・小円筋を合わせた横断面積と等しいとされています。
内旋の筋出力の中でも肩甲下筋は各角度に応じて作用が異なってきます。
1st position (肩関節下垂位)では上部線維がメインで発揮。
2nd position(肩関節90°外転位)下部線維がメインで発揮。上部線維は弛緩し筋出力低下。
3rd position(肩関節屈曲・外転90°位)では肩甲下筋が全体的に伸張され、内旋筋出力低下。
腱板筋群と動的安定性について
棘上筋は上肢挙上時に上腕骨頭を下方へ引き下げる働きを有し、その機能が低下すると上腕骨頭の上方変位を引き起こします。
他腱板の損傷でも同様に上方変位を示しますが、上腕骨頭を下方へ引き下げる力は棘下筋と肩甲下筋の方が大きいと言われています。
2腱以上の腱板が断裂すると(機能が低下すると)上肢挙上の上腕骨頭の上方変位はより顕著になることが示されている。
保存療法や術後早期は断裂腱板や修復腱板へのストレスを避け、目的としている残存腱板筋群を選択的に強化する必要がある。術後6~8週後は修復腱板への筋力トレーニングが許可されるため、修復腱板を対象にしたトレー二ングを行っていくことがベスト!
棘上筋トレーニングで効果的な肢位
▶︎棘上筋トレーニング
棘上筋の挙上方向のモーメントアームは挙上0~40°で前部・後部線維ともに大きいです。対して代償的に働く三角筋はこの角度でのモーメントアームは小さいため、挙上0〜40°の範囲での筋力トレーニングを行うと良い!
棘下筋トレーニングで効果的な肢位
▶︎棘下筋トレーニング
棘下筋の外旋方向のモーメントアームは、横走線維、斜走線維ともに肩関節屈曲位よりも外転位で大きいことが示されています。三角筋と大胸筋の筋収縮を抑え、選択的に棘下筋の収縮を得られる運動は、最大等尺性収縮の40%以下で肩関節外旋に内転を行わせる運動である。
そのため、棘下筋の筋力エクササイズは肩関節外転位、最大等尺性収縮の40%以下で行うと良い!
さらに三角筋の収縮を抑えるためには肩関節外旋に加え、内転を伴わせると選択的な筋力とトレーニングが可能である。
肩甲下筋トレーニングで効果的な肢位
▶︎肩甲下筋トレーニング
肩甲下筋は肩関節屈曲位で30~120°の挙上角度で全ての線維が内旋方向にモーメントアームを有するが、肩関節外転位では外転120°での上部・中部線維の内旋モーメントアームは小さいため、小さい挙上角度での内旋方向への筋力トレーニングを行うと良いです。
また、belly press testは大胸筋、広背筋の収縮を抑え、選択的に肩甲下筋の上部・下部線維の収縮を得られるため、belly press testをトレーニングに応用しても良いですね。
まとめ
今回は、『肩関節リハビリー腱板筋群(ローテーターカフ)の効果的な筋トレ角度』について解説しました。
今回の記事を読むことで、残存腱板や術後腱板を選択的にトレーニングする方法を知っ少しは知ることが出来たのではないでしょうか?
この記事が皆様の臨床の一助になれば幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。