今回はあまり聞かれない、「足根洞症候群」についての記事になります。
足根管症候群がよく聞かれると思いますが、足根洞症候群の診断名がついて、リハビリに回ってくることはそんなに多くないと思います。
ですが、普段見ない疾患だからこそ、本番に焦らないために、この記事で簡単に理解しておきましょう!
目次
足根洞とは?
足根洞とは、腓骨の末端の前内方から距骨頸部外側へ走行する、前距腓靱帯のその中央部下に位置する窪んだ空間のことです。
足根洞症候群とは?
足関節捻挫やその後遺症、反復する足関節・足部への反復負荷によって、足根洞に疼痛が引き起こされる症候群です。
一般的には、運動の激しい20~30代のでの発症が多く、男性よりも女性に好発します。
足根洞症候群の原因
足関節内反捻挫などにより、前距腓靱帯が損傷し、周辺の靱帯にも損傷を受けたりすると足根洞内に内出血が流れ、その過程で瘢痕組織や線維組織に変わり、滑膜炎や浮腫を生じさせることが原因。
また、足関節捻挫などによる距骨下関節の不安定性が生じると、距腿関節や距骨下関節の周辺の炎症や線維化が起こり、疼痛が引き起こされます。
足根洞症候群の症状
足根洞や距骨下関節内の深部、外果周辺の痛みや違和感、距骨下関節のつまる感覚が特徴的です。
足関節を背屈させた時に症状が強く自覚されることも特徴の1つですね。
さらに、足根洞に圧痛が認められる場合にはさらなる足根洞症候群の疑いが高まります。
ADLでは長時間の立位や、坂道での歩行で痛みが激しくなることが多いことが挙げられますね。
レントゲンでは明らかな異常を認めづらいですが、治療的診断法として、足根洞に局所麻酔をすることで痛みが明らかに緩和される所見が得られると、足根洞症候群の疑いが高くなります。
足根洞症候群の治療方法
保存療法
テーピングやインソールによる、足根洞の負担を軽減することは足根洞症候群にはとても有効です。
リハビリによる足部、足関節周囲の筋力強化、柔軟性の改善、バランス訓練などの足関節機能を高める治療も同時に遂行していくことが望ましく、多くの症例に有効です。
足根洞症候群の患者では、腓骨筋群の運動で異常を示すと報告されています。
平坦な地面での歩行では、長腓骨筋、短腓骨筋の筋電活動に変化は見られない。
不整地での歩行の遊脚期で長腓骨筋、短腓骨筋の筋電活動の低下が認められる。
足部・足関節リハビリ紹介
腓骨筋トレーニング
後脛骨筋トレーニング
局所麻酔とステロイドの混合注射
これを週1回を4~6回注射することで全体の50~60%の症例で痛みの軽減または完全に治癒することが多いです。
手術療法
保存療法での症状の緩和が見られない場合に手術療法を行います。
基本的には、足根洞で邪魔している、瘢痕組織や脂肪組織の除去を行います。
足根洞症候群の治療成績
局所麻酔の足根洞注射による症状の緩和を基準にした診断を下した場合、
保存的治療で50~60%の症例で有効と言われており、
症状の緩和が無効の症例でも、簡単な手術で90%は治癒すると言われています。
まとめ
足根洞症候群は、距骨下関節不安定症との区別が難しく、足関節外側靭帯損傷や距骨下関節の変形性関節症、足根洞のインピンジメントとの鑑別も難しいです。
そのため、診断名にとらわれずに、どの部位にどのようなストレスが生じているのかと、理学療法の基本に戻って評価、治療を行うことが望ましいですね。
そして、注射による緩和が永続的に続くことはないということを患者にしっかり伝えることも必要になるでしょう。
足根洞症候群の患者さんが来ても、焦らずに適切な対応をしていきましょう!
この記事がこれからの臨床のヒントになれば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。