リハビリ

着地動作における足部内在筋とアーチの関係性-バイオメカニクスから診て-

佐藤てつや
佐藤てつや
みなさんこんにちは!北海道理学療法士の佐藤てつや(@AmoPhysical)です。

 

今回は「着地動作における足部内在筋とアーチの関係性」というテーマで紹介していきたいと思います。

整形外科クリニックなどでは、スポーツ疾患を有している患者さんも多く通われており、着地動作で痛みが誘発される患者さんには、着地動作を指導する場面もあると思います。

 

この記事では、簡単に

・足部の基本的な機能と解剖

・着地動作時の筋活動(足部内在筋)

足部内在筋のエクササイズ

について解説していきますので、着地動作の指導ならびに臨床思考を高めるためにこの記事を参考にしてみてください。

それでは、着地動作を考える前に、この動作の根本となる足部について簡単に復習していきましょう。

 

人の足部とは?

概論

人の足部とは、他の関節と比較して数多くの骨や靭帯、筋および軟部組織から構成されており、生態力学的に優れた構造をしています。

 

この構造はドーム型の複雑な骨配列構造をなしているため、歩行やスポーツ動作遂行時の荷重や衝撃に応じて機能的に変化して、衝撃の吸収機構としての役割を担っています。

 

そして、足部が床に接地する瞬間に繰り返し過大な力学的ストレスを吸収した後に、次への推進力の作用点となる役割を担っています。

 

足部アーチ

この足部の吸収→推進の機能は、足部アーチが大きく関与しています。

アーチには、静的アーチ動的アーチが存在し、特に動的アーチは足部内在筋と足部外来筋が大きく関与しています。

動的アーチは足部アライメントはもちろん、下肢全体から骨盤に大きな影響を与えかねない重要な機構です。

 

もっと詳しくアーチ構造について解説していきます。

 

足部アーチ構造と解剖

足部には内側縦アーチ外側縦アーチおよび横アーチの3つのアーチが存在し、踵骨隆起、第1中足骨および第5中足骨頭を骨性の支持点とすると報告されています。

内側縦アーチは踵骨・距骨・舟状骨・内側楔状骨および第1中足骨で構成

外側縦アーチは、踵骨・立方骨・および第5中足骨で構成

横アーチは、立方骨と内・中・外側楔状骨によって構成(前方は第1~5中足骨底まで続く)

これらのアーチは、骨性の支持に加えて足底腱膜、長足底靭帯、底側踵立方靭帯、底側踵舟靭帯などが支えており、足部の内在筋および下腿からの外在筋の作用によって保持されています。

佐藤てつや
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つまり、足部アーチは単独の組織によって支えられているわけではないということですね。

 

 

足部アーチに関わる足部内在筋と外来筋

足アーチに関わる筋はおきく分けて、外来筋内在筋の2つに分けることができます。

外来筋は大腿や下腿より起始しており、距腿関節を超えて足部に停止する筋。

(腓腹筋、ヒラメ筋、後脛骨筋、長腓骨筋など)

外来筋の中でも、後脛骨筋と長腓骨筋は、協調した筋活動により後足部の安定性や内側縦アーチに大きく関与しています。

 

内在筋は、足部の中で起始と停止をもつ筋。

(母趾外転筋、母趾内転筋、短趾屈筋など)

佐藤てつや
佐藤てつや
多くの内在筋は、足底には起始と停止をもつと言われているよ!

 

内在筋はさらに4つの区画(内側筋区画、外側筋区画、骨間区画、中央筋区画)に分けることができます。

さらに足底に位置する中央筋区画は、他とは違い、3層の内在筋と足底腱膜を含む合計4層で構成されている。この4層には母趾内転筋や虫様筋、短趾屈筋など動的アーチに関わる筋が存在しています。

 

手の内在筋と足の内在筋の違いについて

解剖学的に足の内在筋は手の内在筋に似ている部分は多いのですが、機能は異なります。

大きな違いは、

足の内在筋は、足部が地面などと接地した状態(CKC)で体重を支え、動的バランスをとり、股関節や膝関節と連動して衝撃吸収機構の一部として機能するという点です。

 

手は対立運動などができ、手の内在筋が使われる様子を確認することはできるが、足の内在筋が使われ、目で見てわかるのは足趾の屈曲、伸展、内・外転運動くらいなんですよね。

それ以外の関節運動のほとんどは、受動的であり、単関節を随意的に運動することが難しいのです。(これも特徴のひとつ)

 

つまり、足の内在筋は手の内在筋のように巧緻性が高く、随意的、能動的に各関節運動に関与することができないのです。

臨床で考えることは、足部は床の凹凸や床反力などにおいて、受動的に生じる足部の関節運動に対して、適合する作用が必要とされている。

そのため、各競技において、足部がどのような状態でCKCとなっているのかを想定し、それらにあった訓練をどのように行うかが重要となります。

 

内在筋の筋活動と着地&着地動作時の足アーチのバイオメカニクス

▶︎Suzukiらの報告
 静的立位時に母趾外転筋は弱い活動を示し、小趾外転筋は活動を認めず、自重以外の荷重負荷を加えた場合では、母趾外転筋の活動は強くなり、小趾外転筋も活動を示したと報告あり。

 

▶︎中尾らの報告
 母趾外転筋と外来筋の筋活動は自重以上の荷重負荷と足関節背屈角度増加により有意に増加したと報告あり。

つまり、

着地時(自重以上の荷重負荷)は、足関節背屈角度が増加するとともに、足部に対し自重以上の負荷が加わることで、内在筋の筋活動はより増加することが考えられます。

 

 

▶︎母趾外転筋の活動について
健常者を対象に片脚垂直跳びの着地時の表面筋電図を用いて計測した報告あり。

結果、

母趾外転筋は、着地時に瞬間的ではあるが%MVCと同等もしくはそれ以上の筋活動量が必要であることがわかった。

 

つまり、内在筋は足関節背屈角度と自重以上の荷重負荷が生じる着地動作において、大きな筋活動が求められ、足部アーチ高を柔軟に変化させながら、着地時の衝撃吸収機能に貢献している!

 

 

▶︎着地動作を行う際、
着地動作を行う際、その高さは高くなるほど着地の瞬間の接地部位が後足部から前足部になり、高さ25cmからの着地では約8割の者が前足部で着地すると報告あり。

着地動作ではその高さが高くなることで、着地の瞬間に足関節がより底屈位を取るとの言われている。

またこのような関節位を取ることによって足部の剛性を高め、より大きな荷重負荷を受け止めることを可能としているが、その分、高くなることで、矢状面状で足関節の底屈が大きくなるので、捻挫などの障害に繋がりやすいのである。

 

 

▶︎静的な荷重を脛骨上部より負荷した研究
荷重負荷を少しずつ増加させた場合に、内側縦アーチの低下およびアーチ長の延長は負荷重量がおよそ体重の150%あたりで頭打ちとなり、足部内在筋(母趾外転筋・短趾屈筋および足底方形筋)の活動の増加すると報告あり。

このことから、足部アーチの許容する荷重負荷量には上限があることがわかりました。

着地動作などで大きな床反力が生じてその上限を上回った場合には、より上位の関節が動くことで着地動作の衝撃に対応していると考えられる。

そのため、胸郭や仙腸関節、股関節、膝関節などが適切に衝撃緩衝することも全身の活動として求められる能力となります。

 

 

着地動作における内在筋の筋収縮様式

内在筋の重要な役割は、距骨下関節や距舟関節などの複数の関節から構成されているアーチ高を柔軟に適応させ、保持することです。

中尾らは、荷重量と足関節背屈角度の増加により全ての内在筋が収縮するものの、アーチ高率が低下すると報告あり。

つまり、

内在筋には、アーチ高率が低下する際に、筋の起始と停止の距離が離れながら収縮する遠心性収縮が生じていることが考えられます。

 

遠心性収縮が筋活動の形式においては高負荷なので、着地動作により内在筋にかかる負荷はかなり大きいと思われる。このようにスポーツ場面におけるダッシュやジャンプの着地での繰り返し発生する高負荷により、内在筋の筋疲労は蓄積し、筋活動が低下し、内側縦アーチは低下するという悪循環が生まれてしまいます。

 

そうすることで、代償的に働く外来筋である後脛骨筋の負荷も増大し、後脛骨筋の負荷増大は、後脛骨筋と後足部の安定性を担っている長腓骨筋の負荷も増大してきます。

佐藤てつや
佐藤てつや
もう悪循環だらけですね〜。

 

このように内在筋の機能低下は、外来筋への影響を及ぼし、足部の機能不全をもたらします。

 

 

扁平足では健常足と比較し、足部内在筋の筋断面積が小さく、足部外来筋の筋断面積が大きくなると報告あり。

さらに、扁平足ではジャンプ着地時の床反力と下肢の各関節角度、足部周囲筋の筋活動においても、着地時の床反力が大きく、母趾外転筋の筋活動は低値を示し、股関節の屈曲角度は増加するとも報告されています。

このように内在筋の機能不全が生じることで、外来筋優位の運動や、隣接関節に障害が生じやすくなります。

 

そのため、アーチの機能を考慮するとCKCによる低負荷高頻度の訓練が有効であると思われます。

 

 

以下に足部内在筋の訓練をいくつか紹介していきます。

足部内在筋の訓練

1.基本肢位

足部底屈位の運動がオススメ!

なぜ?

▶︎足関節背屈位:足底側の外来筋(屈筋)が伸張位となり、外来筋の活動が優位になる。

▶︎足関節底屈位:足底側の外来筋(屈筋)が短縮位となり、外来筋の活動が抑制される。 また、底屈位は内在筋の活動が優位になる。

訓練内容は足趾の屈曲伸展運動が中心となるので、長趾屈筋や長母趾屈筋などの外来筋を優位に使いがちなので、足関節底屈位での運動がやはりオススメですね!

 

2.タオルギャザー

足趾開排(足趾外転)をさせてからタオルを把持させるエクササイズ。

タオルを寄せることに意識をさせるのではなく、足趾外転と伸展位から屈曲をより大きく、ゆっくり行わせることがポイントです!

母趾外転筋・小趾外転筋・骨間筋など足部全体の筋収縮を意識させることが重要です。

 

 

 

3.足趾間エクササイズ

足趾間にタオルや手指を挟ませ、底屈位での足趾の屈曲を行うエクササイズ。

足趾の屈曲と内転を複合運動させ、横アーチに関与する母指内転筋や骨間筋などの収縮を促していきます。

 

 

4.short foot exercise

座位にて足趾を屈曲させずに「足を短く」するイメージで動かすエクササイズ。

動作は、踵骨と中足骨頭を近づけるように動かすこととし、その際に近位趾間関節の屈曲を伴わないように行うことがポイントです!

 

 

まとめ

着地動作の指導を行うためには、まず足部の機能を理解していないといけません。

特に足部内在筋は意識することが難しい部分になります。ですが、意識して取り組むことで、変化を出しやすい部分でもありますので、たくさん練習していきましょう。

 

今回の記事が、これからの臨床のヒントになれば幸いです。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

 

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佐藤てつや
北海道の整形外科クリニックで理学療法士として勤務。 運動器リハビリについての役立つ情報を共有していきます。
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