痛みの出る原因を知りたい。
装具の安静期間を知りたい。
受傷してから、今はどの時期かわかりません。
こんな疑問を解決いたします。
・腰椎分離症の概論
・腰椎分離症の病期別の症状と原因
・「痛みのある人」と「痛みのない人」の違いとは
・腰椎分離症の病期別リハビリ
上記について深掘りしながら解説していきます。
臨床で腰椎分離症の患者さんを担当している方は、本記事を読み終わると、悩みが解決され苦手意識が軽減しますよ。
目次
腰椎分離症とはなんなのか?
まず、腰椎分離症について整理していきましょう。
腰椎分離症とは、腰椎椎弓の関節突起間部(pars in-terarticularis 以下:pars)に起こる疲労骨折のことを指します。
腰椎分離症は経年的に病態を変化させる疾患とも言われています。
腰椎分離症の発生率
主に青少年のスポーツ選手、スポーツ愛好家に多く見られます。
発生率は20歳以上の成人において、約6%(男性約8%、女性約4%)と言われています。
スポーツ選手だけを対象に調査した場合は以下のように言われています。
スポーツ選手全体で10%以上の頻度でみられ、
・野球では16.4%
・ラグビーでは20.5%
ここまで発生率が高くなります。
腰椎分離症の身体所見
結論から言うと、分離症では腰部伸展・回旋時の疼痛と分離部の一致した圧痛が認められます。
▶︎身体所見
・腰椎伸展で増強する腰痛
・腰椎回旋で増強する腰痛
・限局した棘突起の圧痛所見
上記の所見が見られた場合には、腰椎分離症を疑います。
分離症の状態は3つに分類
腰椎pars部の疲労骨折から腰椎分離症に至る過程には大きく3つに分けることができます。
①初期 parsに疲労骨折による骨吸収がhair line状にみられる時期。
②進行期 parsに明らかな骨性gapが見られる時期。
③終末期 いわゆる偽関節状態の時期。
CTとMRIで今どの時期に属しているのか判別することができます。
腰椎分離症の画像診断
腰椎分離症を判断するには、画像診断が基本となります。
画像検査としては、腰椎の単純X線が基本となりますが、単純X線だけでは偽陰性になることも多いので、身体所見より分離症を強く疑う場合にはCTによる画像診断を行います。
分離の初期や進行期の段階では単純X線では判別が困難なことが多いので注意!!
分離が終末期になると単純X線画像でも判別することが可能です。
つまり、単純X線で分離症と診断できるものはその大部分が終末期になってしまっていると言うことです。
その際の分離像で有名なものは、斜位像のいわゆる「スコッチテリアの首輪」と呼ばれる像になります。
ちなみに早期診断には、MRI検査が非常に有用になります。
腰椎分離症初期のMRI画像の特徴
・T1強調像における関節突起間部の低高度変化
・脂肪抑制T2強調像による椎弓根部の高輝度変化
簡単に言うと、骨髄浮腫や炎症性変化が起きていることを示します。
分離症は早期発見するほど骨癒合率は高まり、早期のスポーツ復帰も望めるので、迅速な医療機関での検査が必要になります。
腰椎分離症患者さんがCTを使うメリット・デメリット
・骨形態面での正確な評価が可能
・治療後の骨癒合の評価にも有用
・医療被曝を繰り返すことになる
このように画像診断による時期の分類はできるが、各時期により身体所見が異なるので、それぞれ解説していきます。
腰椎分離症の病期別の症状と原因
他の疾患でも言えることですが、腰椎分離症の治療を行う際には、「その疼痛の原因は何か?」ということを考えていきます。
なぜ?
腰椎分離症はそれぞれの時期で疼痛の原因が異なるからです。
①腰椎分離症 初期の疼痛
結論から言うと、疲労骨折そのものによる疼痛です。
疼痛の程度は大小ありますが、基本的にすべての初期分離症には疼痛が伴います。
主訴として多いのは、「腰部から大腿部にかけての放散痛」
腰椎分離症が疑われた場合は迅速に医療機関へ
初期の分離症では、伴う腰痛が軽微なこともあり、日常生活の中では支障がないということもあります。
そのため、スポーツの時に少し痛みある程度の方は、医療機関を受診しない方が多いです。
実際にこのようなデータが存在します。
【脊椎スポーツ外来の受診結果】
18歳以下の腰椎分離症のうち、63.5%は初診時すでに終末期に至っていた。
という報告あり。
このような背景もあり、初期の分離症患者さんは早期発見しにくいのです。
腰椎分離症では、早期発見するほど、骨癒合率が上昇し、スポーツ休止期間などの安静期間が短縮すると言われています。
ですので、分離症の身体所見を確認した場合には、迅速に適切な医療機関への受診をお勧めします。
②腰椎分離症 進行期の疼痛
結論から言うと、分離部の疲労骨折が癒合していなく、遷延(長引いている)した状態による疼痛です。
この時期では、初期とは異なり安静にしても腰痛が出現しているケースが多くなります。
また、歩く、立ち座りなどの日常生活動作にも支障をきたしていることが多くなります。
③腰椎分離症 終末期の疼痛
結論から言うと、分離部から椎間関節に広がる滑膜炎による疼痛です。(大部分)
そのほかにも終末期には痛みの原因があります。
・変性椎間板による椎間板性疼痛や椎体終板炎が原因の疼痛
・分離すべりの進行に伴い、椎間板高が減少または分離部の骨棘形成。
結果、椎間孔狭窄が併発→神経根障害原因の疼痛(下肢痛やしびれ)
腰椎分離症の中でも、終末期では「痛くない分離症」が存在します。
「痛い分離症」と「痛くない分離症」とは?
「痛い分離症」とは、一般的に腰椎分離症の中でも、初期~進行期の時期を指します。
分離部の疲労骨折による痛みですね。
「痛くない分離症」とは、終末期中でも、滑膜炎が軽減した分離症です。
終末期の分離症の中で、過去に非常に強い疼痛があったにも関わらず、疼痛が軽減・消失したケースが存在していることが確認されています。
このように腰椎分離症の中でも「痛い分離症」と「痛くない分離症」が存在します。
腰椎分離症の疼痛に対する治療コンセプト
これまで解説してきた「痛い分離症」と「痛くない分離症」でそれぞれ治療コンセプトは異なります。
「痛い分離症」初期〜進行期
再度確認しますが、「痛い分離症」つまりは、初期~進行期の分離症のことを指します。
初期~進行期分離症の痛みの原因は、疲労骨折による痛みなので、「骨癒合の促進」を目指していきます。
まず、運動を習慣化している方は、運動・スポーツの休止が必要となります。
初期
初期では骨癒合率が非常に高いため、硬性体幹装具により患部の安静を保ち、骨癒合促進を図りつつ、積極的な運動療法を行っていきます。
硬性体幹装具は、関節突起間部に応力が集中しやすい腰椎の伸展および回旋を徹底的に抑制するものである。
進行期
進行期は装具療法とストレッチ、体幹の等尺性収縮訓練を中心に取り組んでいきます。
何故ならば、進行期は初期と比較して、骨癒合率が低いためです。
あらためて言いますが、疲労骨折の痛みであるため、脊柱であろうと、完全に骨癒合すれば、四肢の骨折のように疼痛は消失します。
発育期腰椎分離症の硬性装具を用いた安静期間と骨癒合
Sairyoらは、発育期腰椎分離症の硬性装具を用いた安静による骨癒合の期間を示している。
▶︎初期は3ヶ月(94%の患者が癒合)
▶︎進行期は6ヶ月(64%の患者が癒合)
このように早期発見、迅速な分離部の安静が骨癒合率を高めてくれます。
「痛くない分離症」終末期
「痛くない分離症」つまりは、終末期の分離症のことを指します。
まず理解していないといけないのが、終末期では、偽関節が形成されているため、保存療法による骨癒合は期待できません。
そのため、疼痛管理を中心とし、疼痛が軽減した場合、随時スポーツ復帰(望まれる方)を目指していきます。
運動療法では、スポーツ復帰用軟性装具を装着してアスレティックリハビリテーションを実施していきます。
終末期の発育期腰椎分離症はすべり症へ進行ケースもあるため、注意が必要。
ここで簡単にすべり症へ進行するメカニズムを解説していきます。
分離症になると、腰椎の運動学的破綻が生じるため、成長軟骨版に異常なストレスが加わり、慢性的な成長軟骨損傷が生じます。
結果、成長軟骨板のすべりが生じる。
と、言われています。
ですので、終末期では、腰椎の運動学的破綻が生じないような体幹の機能獲得が重要になってきます。
薬物療法では、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)を処方して炎症の鎮静化を図ります。
NSAIDsを処方しても疼痛コントロールが難しく、疼痛の持続・再発を繰り返すような頑固な滑膜炎に対しては分離部ブロックが有効なります。
腰椎分離症の再発と予防
腰椎分離症の患者は、硬性体幹装具により分離部を安静に保ち、骨癒合を目指している。
骨癒合された後にスポーツ復帰した場合、再発は見られないのか?
以下の報告がある。
Sasakiらは発育期腰椎分離症患者の26.1%に再発が見られた。
単純に一度癒合を得られた後に再発したものは4人に1人もいることになる。
なぜ再発するの? 予防するには?
結論から言うと、疲労骨折至るまでの過剰なストレスを生み出している原因が解決されていないからです。
再発予防をするには、長期安静期間の中で患部外を含めた再発防止に向けた運動療法と隣接関節で代表的な胸椎と股関節可動性の獲得が必要になってきます。
多くの方が「運動のやりすぎには注意だよ。」と言っています。
ですが、プロを見てください。尋常じゃないほどの練習をしています。
ですが、怪我を未然に防いでいます。
なぜか、運動の質が違うからです。
ですのでセラピストは、その動作やスポーツ特性を理解し、質の高い適切なアプローチが必要になってきます。
まとめ
臨床で腰椎分離症患者さんを見る機会がある場合には、医者との情報共有がとても重要になります。
骨折部の癒合状態を確認しつつ、適切な負荷のトレーニングを実施していきましょう!
この記事がこれからの臨床のヒントになれば幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。