現在は整形外科クリニックで勤務し、医療サイトを2つ運営、勉強会団体の運営にも携わっています。
アイシングはセラピストから一般の方、スポーツ選手まで揃って行なっています。
みなさんは実際アイシングについてどこまで理解していますか?
とりあえず冷やしているだけではありませんか?
別に冷やすことが問題ではありませんが、自分のカラダ、患者さんのカラダに何がおきているか把握することはセラピストとして大切です。
そこで、今回は実際アイシングをRICE処置を含めて説明していきます!
目次
アイシングとは!?
アイシングとは簡単にいうと炎症反応が生じている部分に対して氷嚢等で冷やすことです。
専門的な言葉でいうと寒冷療法に属します。
このアイシングを行う場面で多いのは術後急性期やスポーツ現場での外傷時ですね。
アイシングを行う目的は炎症を抑制することにあります。
炎症は悪のイメージを持たれている方が多いと思いますが、身体を守るための必要な反応なのです。そもそも炎症はどんなことを指すのでしょうか?
炎症とは
炎症には代表的な炎症の5徴候と呼ばれるものがあります。
1.発赤
2.腫脹
3.熱感
4.疼痛
5.機能障害
これらすべての徴候を総称したのが炎症です。
身体を守るための必須能力であり、損傷した組織を修復する働きがあります。
ではなぜ、身体に必須の炎症反応をアイシングで抑制するのでしょうか?
もう少し炎症について掘り下げながら、応急処置で有名な「RICE処置」と関連づけて説明していきます。
・Rest(安静)
・Ice(冷却)
・Compression(圧迫)
・Elevation(挙上)
1978年:Dr.Mirkinにより提唱
RICE処置
スポーツ外傷や術後早期では過剰な炎症が生じてきます。
そのため、RICE処置として損傷部位へ、安静、冷却、挙上で筋や皮膚の軟部組織への血流量を抑制しなければなりません。
さらに、圧迫により、他の部位への毛細血管損傷を防ぎます(内出血を防ぐ)。
まずはこのことを頭に入れつつ、以下を読み進めてみてください。
Rest(安静)
まずは言葉通り、受傷部位を安静にする。損傷の程度ではすぐに固定が必要な場合もあります。
基本的には背臥位ですが、痛みが和らぐ肢位が好ましいですね。臨機応変に!
炎症⇨腫脹⇨修復
この過程を考えると、安静(固定)しておかずに、動き回っていると、再度過剰な炎症が生じて、腫脹を助長しかねません。
助長してしまうことで修復作業に時間を要してしまうので、スポーツ選手などでは早期復帰困難に、術後の患者さんでは可動域制限に繋がることも多いのです。
そのため、出来るだけ安静にすることが好ましいです。
ですが、極端に安静にすることはありません。局所以外は動かしても大丈夫です。
患者さんで局所の安静をお願いするが、全身動かないで活動性が低下し、廃用症候群に近づく人がいるので、あくまでも受傷部位の安静ということは伝えておきましょう!!
Ice(冷却)
冷却の役割は炎症の抑制。
つまり、血管収縮作用による、血流循環の抑制を行います。
神経系の伝達能力を低下させることによって、痛みの軽減になります。
しかし、長時間の冷却はかえって、腫脹を促進してしまうこともあります。
この現象は寒冷誘発血管拡張といい、長時間の冷却で血管透過性が亢進して反射性充血を引き起こし、主張を増悪させてしまうことがあります。
なので、繰り返しの冷却は良いですが、長時間の冷却は注意が必要です!!
Compression(圧迫)
腫脹を最小限にコントロールするために圧迫を行います。
早期から圧迫を加えることにより、内出血や腫脹を軽減し、早期回復を目指していきます。
主に弾性包帯が使われますが、テーピングでも可。
患部にスポンジなどの柔らかいものを挟み、患部の下から心臓方向へグルグル巻いていきます。
圧迫は強すぎると、血行障害に繋がることもあるので観察が必要です。
Elevation(挙上)
原則は患部を心臓よりも高い位置に保持し、静脈還流を促していきます。
重力を利用して、血管内圧を軽減し、腫脹の抑制を図りという仕組みです。
挙上するかしないかでは腫脹や、炎症の早期回復に大きく影響してきます。
RICE処置動画
RICE処置の方法になります。参考程度にどうぞ。
次にどのくらい時間や頻度で行えば良いのか質問されることも多いとですよね。
もう少し詳しく解説していきます。
アイシングの方法紹介
学生や患者さんに「どのくらいやったら良いの?」
と、聞かれた時に大体20分くらいかな。
として言えなかった自分がいたので反省しています。
みなさんにはしっかりと解説していきます。
アイシングは何を使うのが良い?
・コールドスプレー
・氷嚢
・アイスノン、アイスバッグ
などなどたくさんありますが一番良いのは氷嚢つまりは氷です。
保冷剤などは冷やし過ぎになる危険性がありますので氷が無難です。
アイシングの時間
結論は20分以内で行うこと。
20分以上のアイシングは神経系や組織の損傷につながる可能性があることや、運動パフォーマンスの低下につながると報告されています。
また、先ほど軽く触れた、反射性充血につながり、腫脹の増悪につながる危険性もあるため、20分以内に留めるべきと判断されています。
最近ではアイシングのデメリットとして組織修復の回復を遅らせてしまい、靭帯や組織の機能低下が生じると言われています。
靭帯などの組織は血流により栄養素を運んでもらい、回復の過程を踏みます。
そのため、過度にアイシングすることはその回復を弱めてしまうことにもなるということだけは頭に入れておきましょう。
つまり、とりあえずアイシングすれば良いってわけではないということですね。
アイシングの頻度
20分のアイシングを行なった後は、約1〜2時間の間を空けましょう。
再度血管が拡張するのに1〜2時間かかると言われているためです。
僕の場合は患部が人肌くらいになってきたら、再度やってもらうことが多いです。
炎症反応は24〜48時間程度続くと言われています。
ただ、この時間繰り返しアイシングしていると、先ほど解説したように、組織の回復を阻害してしまうため、炎症徴候と痛みの程度で判断し、自制内であればアイシングを中止し、軽い運動を始めていきます。
ただし、重症度によっても変わるので、受傷した場合には、医療機関での適切な処置が必要となります。
まとめ
アイシング、RICE処置はスポーツ現場だけでなく、臨床でも多く見られると思いますが、実際に自分のカラダ、相手のカラダがどうなっているか理解した上で行うことで、今後の予後予測にもつながってくると思います。
ですので、基本原則に基づきながら適切な処置を心がけていきましょう。
この記事があなたの今後の成長につながると幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。