膝関節

膝関節リハビリ 大腿四頭筋セッティングについて解説!

佐藤てつや
佐藤てつや
北海道理学療法士の佐藤てつや(@AmoPhysical)です。
現在は整形外科クリニックで勤務し、医療サイトを2つ運営、勉強会団体の運営にも携わっています。

今回は、みなさんが臨床で一度は見たことがあるであろう『クアドセッティング』について網羅的に解説してきます。

最後までお読みいただくと、『クアドセッティング』について新しく学べることもあるかもしれません。

そんなこと知っているわ!! ってところは飛ばしてもらってOKです!

 

では早速クアドセッティングについて解説していきます。

クアドセッティングとは?

クアドセッティングとは変形性膝関節症の方などに多く行われ、術後早期から保存療法の方まで多くの方が行う定番のリハビリメニューです。

膝関節をリラックスさせた軽度膝伸展位から膝関節完全伸展するトレーニングで認知されていることが多いです。

実は呼び方がたくさんあります。

・大腿四頭筋セッティング
・Quad setting
・patela setting
・タオルつぶし

などなど……実際呼び方はそこまで関係ありません。
大切なのは行う時のポイントです。

 

どんどん紹介していきますね。

クアドセッティングの目的と効果

結論:クアドセッティングは筋力強化が目的でなく、大腿四頭筋の筋活動の維持です。

つまり、活動する筋線維数の減少を抑えるということになります。

上記以外にも、たくさんの効果があります。

・膝蓋骨の可動性の向上
・膝伸展可動域の向上
・内側広筋の促通、萎縮防止
・循環促進
・膝周囲の軟部組織の癒着防止

などなど……

メインの効果よりもこれらの効果が必要な患者さんも多く見られますので、担当の患者さんは上記のどの項目に当てはまっているかを評価しなくてはいけません。

佐藤てつや
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この運動は高齢者でも理解しやすい内容かつ、関節運動が少ない運動(ほぼ等尺性収縮)なので安全に行うことができます。

 

 

クアドセッテイングの方法

肢位:背臥位or長座位

・丸めたタオルやクッションを膝下に置き、それを潰すように膝を伸ばしていきます。
この時は膝関節完全伸展を促すように行なっていきます。

5秒間保持するように心がけましょう。

行うときは実際に大腿四頭筋(内側広筋)の収縮を患者さん自身に触れてもらうことで、運動の理解が進み、自主トレでもやってもらえるようになります。

参考動画🔽

 

クアドセッティングで起こりやすい代償動作

ここからは自分の見解が多くなりますので、臨床のヒント程度に捉えてください。

ハムストリングスの影響

大腿四頭筋の中でも特に内側広筋に着目してエクササイズを行うとしたら拮抗筋になるハムストリングスが影響してきます。

よく大腿直筋を抑制するために、ハムストリングスの遠心性収縮を利用してセッティングを行うひとが多くいます。

長座位で骨盤前傾位を保ちつつ行うセッティングですね。

確かに理論上この方法では大腿直筋が抑制され、内側広筋が使われるように感じますが、文献では以下のことが報告されています。

・背面支持ありー股関節屈曲15°(背臥位)
・背面支持ありー股関節屈曲65°
・背面支持なしー股関節屈曲115°(長臥位)

上記3郡の肢位でセッティングを行なった結果がこちら🔽

セッティング力

股関節屈曲65°>股関節屈曲15°>股関節屈曲115°

内側・外側広筋筋活動量

股関節屈曲65°>股関節屈曲15°>股関節屈曲115°

 

つまり、骨盤前傾位を保持した肢位よりも、体幹が少し置きた状態でのセッティングの方が広筋群の筋は発揮されやすいという報告があります。

このことを考慮すると、果たしてハムストリングスの遠心性収縮を促したセッティングは効果的なのか?という疑問が生まれてきます。

 

上肢把持の影響

患者さんの中にはベッド端を把持してセッティングをする方がいました。

長座位が不安定だから把持しているのかとも思ったのですが、以下の報告を読んで、上肢でベッド端を把持する理由が少しわかってきました。

・上肢支持なし
・上肢接触
・上肢把持

上記3郡の肢位でセッティングを行なった結果がこちら🔽

セッティング力

上肢把持>上肢接触>上肢支持なし

この結果から、上肢はベッド端などにつかまって、セッティング練習を行うことが効果的ではないかと示唆されます。

 

理想のセッティング肢位(仮説)

上記の報告をまとめるとこんな感じです。

報告のまとめ

・最もセッティング力が高い肢位は股関節屈曲65°の長座位(背面支持あり)

・上肢でベッド端等を把持するとセッティング力が強くなる

軽く長座位になってもらい、指先で内側広筋の収縮を自分で感じながら(触診)、なおかつ対側の上肢はベッド端を把持。

これらが組み合わさり、効率の良いセッティングを行うことができると考えています。

もちろんハムストリングスの遠心性収縮を促したセッティングも間違ってはいないと思います。

実際に変形性膝関節症の患者さんの多くは、筋の遠心性収縮が苦手と報告があります。

ハムストリングスの柔軟性低下が生じている方も少なくありません。複合的な部分に関与するのであれば、こちらの方が使われますね。

これらを踏まえて何を言いたいかと言いますと
どんな目的でセッティングを行うかということです。

 

クアドセッテイングの具体的な回数

回数でよく聞くのが、「1万歩」でセッティング「400回分」の効果があるということ。

文献では1万歩歩いた時の筋活動=大腿直筋466回、内側広筋381回(セッティング)と同じ。

別に1万歩歩くことは必要ありません。ですが最低限筋力維持はしたいです。

筋力維持に必要な歩数も文献で報告されています🔽

筋力維持に必要な歩行数は、なんと400歩

普通に歩行する方はすぐ達成しますが、離床困難な方には大変ですよね。

しかも、セッティング回数でいうと大体150〜200回くらい。

1日3setにしても1setが50回以上⁉︎  かなり多い数字です。

そのため、筋力維持を目的に行うことを頭に入れつつ行なってもらいます。

臨床では1set20回で設定し、少なくても3setはしてもらうようにしています。

 

クアドセッテイングの肢位別による変化

セッティングでは、背臥位の他に腹臥位、立位で肢位を変更して行うことができる。

肢位を変更して何が変わるのか?

有名なところでは、腹臥位でのセッティングでは背臥位でのセッティングよりも大腿直筋が55%から80%へと高くなると報告されています。

立位での変化はよくわかりません(すみません)。

ですが、今一度よく考えると、クアドセッティンングの目的とメリットは等尺性収縮様の運動で関節運動が少なく、安全に行えること、さらには筋力維持が目的です。

つまり、わざわざ負荷を強くしたり、立位の不安定の中で行うメリットはあまりないと思われます。
まず、立位を取れるのであれば、クアドセッティング以外の効率的な運動が行えますよね。

なのでセッティングは背臥位で行うことが無難かもしれませんね。

まとめ

いかがでしたでしょうか?
一度は臨床で見たことがあるセッティング運動。
以外とポイントがありますよね。

全部は知らなかったよーって人もいたのではないでしょうか?

ズバリそのような方に読んで欲しかったです。

この記事があなたの今後の成長につながると幸いです。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

 

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北海道の整形外科クリニックで理学療法士として勤務。 運動器リハビリについての役立つ情報を共有していきます。
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