膝関節

膝関節の代表的な可動域制限因子を理学療法に着目して伝えます。

膝関節は人間が日常生活行う上でかなりの可動性を求められる関節です。

膝関節の可動域が制限されることで、立ち上がり、歩行、正座などの動作を遂行することが難しくなり、ADLに支障をきたしてしまいます。

そのため、膝関節の可動域制限となりうる要因を理学療法の観点から見ていきましょう。

 

膝関節における可動域制限因子

まず、膝関節は一般的にこのように言われています。

膝関節は人体で最も大きい関節で、大腿膝蓋関節(PF関節)と大腿脛骨関節(FT関節)で構成されています。さらに、膝関節は最も頻繁に力学的影響を受ける荷重負荷関節でもあるので、機能不全、機能障害が生じた際には、異常なメカニカルストレスが生じて、膝OAに至るケースもあります。

このように、膝関節はPF関節、FT関節からなりうる関節のため、膝蓋骨、大腿骨、脛骨および周囲軟部組織が関係してきます。

 

その中でも、代表的な関節可動域制限因子をこれら8つです。

・疼痛
・皮膚
・関節包
・筋、腱、筋膜
・筋スパズム
・関節内運動
・腫脹、浮腫
・骨

それぞれ理学療法ポイントを踏まえて、説明していきますね。

 

疼痛による制限

疼痛が制限因子の場合は、無抵抗性のエンドフィールであり、患者の疼痛によって、他動的に関節が動かせない状態になっていることが多いです。

 

無抵抗性のエンドフィールの場合は、エンドフィール以上の過度な関節可動域練習は避けるべきです。もし急性期の炎症による疼痛であれば、安静が優先。必要があれば、寒冷療法としてアイシング等を行うことや、医師との連携を図り、服薬コントロールを検討していきます。

 

また、疼痛によって、下肢の筋スパズムが生じて可動域制限になっている場合は、筋リラクゼーションを施行し、疼痛のない範囲でのマイルドな関節可動域練習を行うことが重要になってきます。

Drとの連携は重要!
何故ならば、疼痛が急性期である場合では、積極的な可動域練習は炎症を悪化させてしまうことがあります。また骨折や骨壊死の危険性も考えられるからです。その場合、単純X線画像、MRIなどの情報などをもとにDrと判断することが必須となります。

 

皮膚の癒着・可動性低下による制限

まず、知ってもらいたいのはコレ!

膝関節の可動域制限の割合はこちら。
関節構成体が約45%、筋が約40%、皮膚が約15%と言われています。

このことから、皮膚の伸張性低下は可動域制限の原因に十分なり得ます。

 

皮膚切開を伴う、代表的な手術で人口膝関節全置換術(TKA)があります。この術式では膝蓋骨上部付近に縦方向の術創が生じるため、縦方向の皮膚可動性が低下しやすいです。
そのため、術後早期から術創部の皮膚可動性を獲得できるようにアプローチしていきます。

 

術創部を離開するような伸張ストレスは瘢痕の肥厚化を進行する恐れがあるので注意!
膝関節屈曲運動時には、術創部が理解するようなストレスを避けるために、皮膚を上下から寄せて、皮下の滑走性を高めるようにしていきましょう!

 

 

関節包の癒着・短縮による制限

関節可動性の障害では、関節周囲筋の伸張性と関節包の滑走性が関節可動性に影響していると言われています。膝関節の手術や炎症、長期間の固定に伴う不動によって関節包の癒着や短縮、線維化が生じ、可動域の制限につながるとも言われています。

 

さらに、単純に不動しているものと、手術や外傷による関節内組織の侵襲を受けた不動では、後者の方が早期からの侵襲部位の癒着形成が生じて、関節包の線維化が惹起されてきます。

 

そのため、不動の期間と手術や外傷の有無は確認し、その影響を考えながらアプローチを考えていかなければなりません。

 

筋・腱の短縮、筋膜の癒着による制限

関節の固定、外傷、手術などによって、筋や腱の短縮、筋膜の癒着が生じることで、関節可動域の制限につながります。膝関節で代表的な手術である、TKAでは大腿直筋や、膝蓋腱の筋・筋膜や腱を切開するため、切開部分の癒着が関節可動域の制限に関与する可能性があります。

手術の内容によっては、薄筋や半膜様筋など、移植腱を用いて行う術式が存在します。このような場合は、移植腱の切開に伴う筋や腱の短縮、筋膜の癒着に対してもアプローチが必須となります。

 

 

筋スパズムによる制限

筋スパズムは一般的に、持続的な疼痛やアライメント異常に生じることが多いです。
それにより、局所的で持続的な筋緊張の亢進(筋スパズム)が生じて、関節可動域制限に繋がってきます。

ここで重要なのは、筋スパズムを改善するアプローチだけでなく、根本的な疼痛・アライメント異常の要因を明確にし、アプローチしていくことです。

また、運動器の問題で引き起こされる疼痛では、関節が特定の方向へ何度も動いてしまうパターンとなり、そのパターンで使われる筋の筋緊張が亢進し、運動アライメントの微妙な機能障害が組織にストレスを与え、疼痛が生じる可能性が多いです。

そのため、関節運動時に優位に働く筋の収縮によって特定の運動パターンを形成し筋スパズムが生じていないかの評価を行い、アプローチすることが重要となります。

 

 

関節内運動の障害による制限

関節の遊び(joint play)の障害で関節は可動域制限を生じてしまいます。一番多い要因としてあげられるのは、関節包の短縮による制限です。

膝関節の関節内運動の障害として、膝関節半月板の損傷による引っかかり感(catching)やFT関節の半月板が挟まり、膝関節の屈曲・伸展ができなくなる嵌頓症状(locking)などが出現する可能性があります。

保存療法で症状の改善が見られなければ、手術療法の適応となります。

 

 

腫脹・浮腫による制限

関節内の炎症や外傷によって生じる腫脹など、様々な原因による浮腫によって関節可動域は制限されます。
膝関節内で炎症が生じると、膝蓋上嚢(膝蓋骨上方の深層に位置)に水腫が観察されるようになります。

膝関節は、FT関節間の関節包から膝蓋骨上部にわたって膝蓋上嚢が連なっており、膝蓋上嚢の癒着は膝蓋骨下方への滑走性低下を招き、膝関節拘縮の原因になります。

そのため、膝関節の拘縮予防では膝関節水腫の早期消失を図ることが重要となります。

腫脹、浮腫が生じた際のアプローチは、弾性包帯による圧迫やメドマー、下肢挙上位での運動などを行なっていきます。

 

 

骨による制限

退行変性による膝OAでは、どうしても関節裂隙の狭小化や骨棘の形成が見られます。
膝OAの重症度が高い例では、脛骨、大腿骨、関節裂隙で形成された骨棘の衝突による骨性の可動域制限が生じてきます。

理学療法では骨性の制限の場合、保存療法として改善することは厳しく、手術療法の適応になることが多いです。

明らかに骨の制限がある場合は医師に相談することが必要になります。

 

 

まとめ

いかがでしたでしょうか?

膝関節において、代表的な可動域制限因子を紹介しました。
関節包や半月板の存在を無視して、筋のみにフォーカスする方も多いのではないでしょうか。

今回の記事で「あーこんなのもあったな」と思っていただくだけでも構いません。
その少しのキッカケが大事だと僕は思っています。

他にも普段の臨床のキッカケになる記事があると思いますので、是非、他の記事も覗いて見てください。

最後までお読みいただきありがとうございました。

 

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佐藤てつや
北海道の整形外科クリニックで理学療法士として勤務。 運動器リハビリについての役立つ情報を共有していきます。
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