膝関節

膝関節の痛みの原因となる、膝蓋下脂肪体のリハビリを理学療法士が解説!

佐藤てつや
佐藤てつや
みなさんこんにちは!北海道理学療法士の佐藤てつや(@AmoPhysical)です。

今回は、「膝関節の痛みの原因となる、膝蓋下脂肪体のリハビリを理学療法士が解説!」というテーマで解説していきます。

膝関節前面に痛みがある患者様では、絶対に確認しておきたい部分です。

少しでも、膝蓋下脂肪体について詳しく知りたい!という方は、最後まで読み進めてみてください。

膝蓋下脂肪体とは?

膝蓋下脂肪体膝蓋下脂肪体infrapatellar fat pad=IFPはHoffa脂肪体とも呼ばれ、膝蓋腱(膝蓋靭帯)の深層にある脂肪の塊です。

関節包内や関節外に存在し、主に膝蓋大腿関節の滑りに貢献し、クッション作用として関節を守ってくれています。

ただし、膝蓋下脂肪体はクッション作用だけが役割ではありません。

 

 

膝蓋下脂肪体の役割と動態について

主な役割として、以下の5つが挙げられます。

膝蓋下脂肪体の5つの役割

①衝撃などの外力を和らげるクッション作用

②摩擦や刺激に対する、膝関節の防御機構

③関節軟骨面の清掃効果

④滑膜による関節液の分泌と膝関節の滑りを良くする潤滑作用

⑤膝蓋骨、膝蓋下脂肪体に対する血流ポンプ作用

簡単に説明すると、膝関節内の滑りを良くして、関節の負担を軽減してくれています。

 

 

膝蓋下脂肪体の動態(屈曲・伸展)

前述した通り、膝蓋下脂肪体は膝関節をスムーズに動かすために必要不可欠な組織になります。

膝関節の屈曲・伸展動作でそれぞれ膝蓋下脂肪体の動きは変化します。

結論:膝蓋下脂肪体は膝関節屈曲で後方に移動し、膝関節伸展で前方へ移動する。

 

 

膝関節屈曲動作

膝蓋下脂肪体は膝関節屈曲に伴い、後方へ滑り込みます。

膝関節屈曲する際に、前面の膝蓋腱と後方のACL(前十字靭帯)・PCL(後十字靭帯)に阻まれ、押し出されるように、大腿骨と膝蓋骨の隙間に滑り込む形になります。

この時に、半月板の後方移動の制動という役割もこなしています。

 

本来、膝蓋下脂肪体は柔らかい組織で、様々な形態に変化し、膝蓋大腿関節のクッションになっています。

しかし、何らかの要因で膝蓋下脂肪体の柔軟性が低下した場合、

膝関節屈曲時に、半月板の後方移動を阻害してしまい、膝関節(半月板)インピンジメントになりうる可能性が出てきます。

 

 

膝関節伸展動作

膝蓋下脂肪体は膝関節伸展に伴い、前方へ押し出されます。

前方へ押し出された際に、前面の組織である、膝蓋骨・膝蓋腱の可動性、柔軟性が低下していると、膝蓋下脂肪体の流入スペースが狭小化してしまい、膝関節内圧が亢進して痛みにつながるケースがあります。

膝関節の完全伸展時に、膝関節内圧は最高値に達するため、膝関節伸展動作を獲得したいのであれば、膝前面組織にもアプローチし、膝蓋下脂肪体の流入スペースの確保が重要になってきます。

膝蓋腱の中でも、外側膝蓋支帯内側膝蓋支帯があり、この組織の柔軟性低下が、膝蓋骨の動きを妨げ、膝蓋下脂肪体の前方への押し出しを邪魔していることがあるので、チェック!

 

 

膝蓋下脂肪体の痛みについて

膝蓋下脂肪体の炎症(Hoffa病)

膝蓋下脂肪体の炎症(Hoffa病)は、膝関節への外傷や繰り返しの微細損傷などにより、小出血を起こし、炎症性細胞の浸が行われます。

それにより、結合組織の肥大化が進み、膝蓋下脂肪体の線維化からの柔軟性低下となってきてしまいます。

この柔軟性低下があるため、インピンジメント様の痛みが出現してしまうということです。

 

 

膝蓋下脂肪体はそもそも痛みを感じやすい組織!?

炎症が生じた後には、新生血管神経が増殖してしまいます。

それらの影響もあるのか、膝関節の中でも、特に神経分布が多い組織のため、痛みが出やすいです。

そのため、膝関節前面に痛みが生じた場合には、絶対に確認しておきたいのです。

 

 

膝関節前面組織の柔軟性低下

膝関節の動態のところでも、触れましたが、

膝関節前方の膝蓋腱や膝蓋骨、後方のACL・PCLに何らかの異常が存在することで、

膝関節の内圧亢進による痛みの出現や、半月板の誘導に制限が生じることでインピンジメント様の痛みの出現があるため、各組織がどのように膝関節に影響を及ぼしているかを、考えなければなりません。

 

 

膝蓋下脂肪体に異常をきたしてしまう人の特徴

以下に臨床でも多く見られる特徴を記載します。

・膝蓋骨周囲軟部組織の拘縮
・膝内反変形(O脚)
・下腿外旋症候群
・ACLや半月板などの関節鏡手術、またはTKA術後

変形性膝関節症の多くが、上記の膝内反変形(O脚)下腿外旋症候群を呈しています。

この場合、関節自体の変性から、膝蓋下脂肪体は線維化し始めます。さらに、内反or下腿過外旋しているため、外側に脂肪体が滑り込むスペースがなくなり、膝内側に偏移してしまうケースがあります。

 

また、
TKAなどの手術により、膝蓋下脂肪体を切除する場合があります。

その場合、術侵襲された膝蓋下脂肪体は回復過程において、拘縮や癒着を呈しやすくなってしまいます。

上記の特徴を呈している患者さんを診ていく上では、この可能性を考えてみましょう。

 

 

膝蓋下脂肪体の評価方法

膝蓋下脂肪体の癒着は体表からの触診が可能です。

膝関節伸展で前方へ移動(膝関節内圧↑)、膝関節屈曲で後方へ移動する(膝関節内圧↓)、この動態を確認する作業を行い、膝蓋下脂肪体由来の疼痛なのかを鑑別します。

確認ポイントは圧痛です!

・膝関節軽度屈曲位で、膝蓋腱の両脇から前方へ圧迫を加えた状態から、膝関節伸展を促します。

この時に、痛みが誘発されたら、膝関節の内圧による膝蓋下脂肪体由来の痛みの再現だと判断します。

・外側膝蓋靱帯からのアプローチでは、外側の脂肪体の状態を確認できる。
・内側膝蓋靱帯からのアプローチでは、内側の脂肪体の状態を確認できる。

臨床では、下腿過外旋による、脂肪体の内側偏移が多くみられるため、内側での圧痛が見られやすいです。

また、膝蓋骨の可動性や下腿の動きのチェックも同時することをオススメします。

 

【参考動画🔽】

 

 

Hoffa疼痛誘発テスト

・膝関節屈曲30〜60°付近で、母指により膝蓋下脂肪体を圧迫し疼痛の有無を確認する。

・そのまま膝関節伸展を行い、疼痛の増悪が確認されたら、陽性と判断します。

・これを膝蓋腱の内側、外側とそれぞれ評価します。

膝蓋下脂肪体の内圧を高めることで痛みを誘発する検査なので、指尖でなく、指腹で適切に圧迫を加えましょう。

【参考動画🔽】

 

 

膝蓋下脂肪体に対してのリハビリ&アプローチ

膝蓋下脂肪体由来のリハビリのアプローチ方法は、いたってシンプルです。

・膝蓋下脂肪体のマッサージと膝蓋骨のモビライゼーション

これを行います。

膝蓋下脂肪体の柔軟性向上をイメージして行いましょう。

※術後は早期からの介入をすることが必要です。

【参考動画🔽】

他にも、

・超音波などの物理療法
・テーピング
・ステロイド注射
・手術療法(あまり行われないが、関節鏡で部分摘出をすることもあります)

などがあります。

ただし、第一選択としては、保存療法(徒手療法)になってくることが多いと思います。

 

 

まとめ

膝関節の痛みの中でも、膝蓋下脂肪体は問題になりやすい部位になります。

担当している患者さんに同じような症状を訴えている方はいませんか?

膝蓋下脂肪体の評価をしてなかったという人は、早速確認してみてください。

 

この記事が、これからの臨床のヒントになれば、幸いです。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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北海道の整形外科クリニックで理学療法士として勤務。 運動器リハビリについての役立つ情報を共有していきます。
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