臨床で膝OA患者さんを診る際に、どこ見れば良いのかわからず、曖昧にしている方が多いです。
なぜなら、膝関節の機能と歩行についての関係性を理解していない方が多いからですね。
そこで今回は以下のお悩みを解説していきます。
膝OA患者さんの歩行分析はどこ見れば良いの?
膝OA患者さんの歩行で何が重要なの?
膝OA患者さんと健常人で床反力と筋機能に違いがあるの?
本記事を最後まで読むと、「膝OA患者さんの歩行を診る際の重要ポイント」を理解することができ、臨床で結果を出すことができると思います。
それでは、最初になぜ膝OA患者さんは歩行を見ていかなければならないのか解説していきます。
目次
なぜ、膝OA患者さんの歩行分析は大切なのか?
結論、『膝OA患者さんは筋機能不全による異常歩行が膝OAの進行に関与しているから』である。
みなさんも知っているように、膝関節疾患の患者さんは筋機能不全に陥っている方が多いです。
この筋機能不全が原因で疼痛や異常歩行が出現しているケースが数多く見受けられると思います。
先ほども伝えたように、
一般的な内側膝OA患者さんでは、力学的要因というものが膝OAの発症や進行に関与しています。
この力学的要因の中には、筋機能不全があり、その筋機能不全の中には身体の運動制御困難の要因も含まれています。
そのため、協調性低下(運動制御困難)による筋機能不全なのか、単純に筋力低下による筋機能不全なのか判別することが重要になってきます。
どちらの要因だとしても、異常歩行を診ていく上で、筋機能不全が影響しているということだけは頭に入れておきましょう。
膝OA患者さんの異常歩行で代表的なものは?
異常歩行の中でも代表的なものが『ラテラルスラスト』です。
このラテラルスラストは立脚期にのみ出現する現象です。
膝OAの進行にも関与しているので、歩行分析の中でも立脚期を診ていくことが重要であると言えます。
まずは、各相の特徴を解説していきます。
歩行分析 IC~LRまでの特徴
IC~LR(歩行周期の0~12%)は、荷重負荷が加速的に増大する力学的に極めて重要な時期になります。
矢状面では、膝関節は床反力により外部膝関節屈曲モーメントが作用することで屈曲し、それを大腿四頭筋の遠心性収縮による衝撃吸収機構によって制限しています。
同時に、股関節伸展筋群が外部股関節屈曲モーメントに拮抗することで股関節の安定化を図っています。
ここで大腿と下腿で注目すべき点があります。
健常者はIC~LRではほとんど大腿の前傾運動は生じておらず、下腿の前傾運動が生じています。
筋活動の観点から見ると、IC~LRでは大殿筋と大腿筋膜張筋が大腿を安定させ、内側広筋が下腿の前傾を制動しながら動的な安定性のための役割を果たしていることが考えられます。
膝OA患者さんでは健常者と比較して、筋機能に違いがあります。
確認していきましょう。
膝OA患者さんの筋機能について
膝OA患者さんは、健常者と比較し、『大腿筋膜張筋、大腿直筋、内側広筋、大腿二頭筋』の筋活動が増加し、大臀筋の活動は減少している結果を示しています。
簡単に言うと、
膝OA患者さんは大腿前面・後面・外側面の筋を過剰に収縮させているということになります。
この現象は、
・疼痛
・関節弛緩性増大の補償
・内側コンパートメントへの荷重
上記を減少させるために、膝関節周囲の筋群を共同収縮させて膝関節を安定させていると考えられます。
しかし、この過剰の共同収縮の結果、
大腿と下腿の運動学的変化が少なくなり、ガチガチの下肢の患者さんが増えてくるのです!
歩行分析 LR~MStまでの特徴
LR~MSt(歩行周期の12~31%)は、両脚支持期から単脚支持期へと移行する時期であり、骨盤・体幹の安定機能が要求される時期になります。
矢状面では股関節・膝関節は屈曲から伸展方向への運動が生じることで身体重心を上昇させます。
大腿と下腿の運動はこの時期にIC~LRでの運動とは逆転し、下腿の前傾は減少し、大腿の前傾が急激に加速してきます。
前額面では、股関節内転によって膝関節の鉛直線上に身体重心が近づき、股関節外転筋群によって骨盤、股関節を制御しています。
股関節外転筋群によって骨盤と股関節を安定させていますが、同時に腸脛靭帯が股関節外転筋群の筋活動を通して、膝関節の外側支持機構として、膝関節の安定化を担っています。
膝OA患者さんではどのようにしているか?
膝OA患者さんでは、単脚への移行期に『ラテラルスラスト』を認めることがあります。
この要因としては、下腿の外側傾斜の増加と股関節内転運動の減少が関与していることが考えられます。
一般的に膝関節周囲筋の共同収縮は1歩行周期を通して立脚期で最も高いと言われています。特にLRの単脚支持期でより高い共同収縮を示しています。
ただでさえ共同収縮が強い立脚期に膝OA患者さんは過剰に共同収縮をしながらIC〜LRを迎えるため、筋の協調性は低下し、筋機能不全に陥ってしまうのです。
さらにこんな報告もあります。
重症度や下肢アライメント、膝関節内側弛緩性の程度および状態に関係なく、膝関節外側の筋の共同収縮、筋活動の大きさおよび継続時間が増大する。
これら上記の特徴から、歩行動作における膝関節の重要な役割は、ICの衝撃吸収機構であると言えます。
膝OA患者さんでは衝撃吸収機構を賦活し、膝関節へのメカニカルストレスを軽減することが理学療法戦略として重要となることは間違えないですね。
立脚期に膝関節の衝撃吸収を効率よく行うこと
これを遂行するためには、筋機能と床反力の観点から説明することができます。
歩行動作における衝撃吸収機構の特性
大腿四頭筋の遠心性収縮と内側広筋が重要になる理由
歩行動作のIC~LRでは大腿四頭筋による遠心性収縮が非常に重要になると言うことは散々伝えてきました。
その中でも広筋群は膝関節の安定性に関与しており、
この広筋群の中でも内側広筋が膝関節伸展最終伸展可動域において重要な役割を有しています。
この内側広筋は、膝関節に炎症が生じると関節内の腫脹に伴い反射性の筋萎縮が生じ、筋力低下を起こしやすいので、膝関節痛を有している患者さんでは、基本的に弱化していると想定しても良いかもしれませんね。
このことを想定しながら臨床に挑むだけでも、筋出力に左右差がないのか、内側広筋による膝蓋骨の誘導はできているのか見ることができます!
臨床で確認してみてください!
内側広筋では以下のようなことも言われています。
膝OA患者さんは、等尺性収縮や求心性収縮よりも遠心性収縮の低下が著明に起こっているという報告です。
大腿四頭筋の中でも内側広筋が優位に遠心性収縮に関与しているということも報告されているので、膝OA患者さんのIC~LRでは、内側広筋の機能改善が臨床上で必須となることが言えますね。
IC~LRまでは1歩行周期時間にして約0.12秒。
この一瞬の時間で大腿四頭筋の遠心性収縮が求められるので、大変ですよね。
床反力における衝撃吸収機構で考えられること
1歩行周期の中では歩行スピードの減速と加速が常に繰り返されています。
IC~LRでは歩行スピードは減速を示します。
膝OA患者さんではこのようなことが言われています。
IC時の床からの衝撃力を小さくし、前方への加速の制動を最優先させることで後方成分の力積値が増える結果、立脚後期での推進力を十分に発揮させることができず、立脚時間を延長させることで歩行スピードを維持している
この結果から考えられることは以下のことです。
膝OA患者さんは、IC直後より床から受ける衝撃力を小さくしようとするメカニズムが働いていることで、IC~LRでの膝関節の遠心性収縮による衝撃吸収機構が低下していると言うこと。
このことから、IC~LRでは膝関節伸展筋群の相対的筋活動量を増大させ、関節の安定性を高め、立脚時間を延長させながら床からの衝撃を吸収しているのではないか。
と考えられます!
まとめ
難しいですよね。
膝OA患者さんは立脚期に膝関節周囲筋で膝関節を過剰に安定させてしまいます。
それが返って、筋機能を阻害しているとは分からず、悪循環になってしまうんですよね。
そのため、セラピストが筋機能や床反力の視点から介入し、正常な膝関節の衝撃吸収機構を促すことが必要になるのです!
みんさんも立脚期に注目し、どのような衝撃吸収機構を使っているか確認してみてください!!
この記事が皆様の臨床の一助になれば幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。