みなさんこんにちは。
今回は『スターティングペイン〜歩き始め・立ち上がりの時の痛みについての見解』というテーマで話していこうと思います。
患者さんの主訴でも多い、歩き出し、立ち上がり時の痛み。
コレ(この現象)は専門用語的にはスターティングペイン(starting pain)と言われています。
医療業界ではどのように捕らえられているのでしょうか。検討していきましょう。
スターティングペインとは?
立ち上がりからの一歩目や、しばらく座っていた後の立ち上がりなどの動作開始時痛を専門用語でスターティングペイン(starting pain)と言います。
臨床では変形性膝関節症(以下、膝OA)などの膝関節に痛みがある患者さんに多くみられ、歩き出しだけで、歩いていると痛みが薄れてきたという患者さんでは、スターティングペインの可能性があります。
このスターティングペインの原理は以下のように言われています⬇️
スターティングペインの原理
スターティングペインがが生じる要因として有力な説は、関節内に存在する滑液が循環不全を起こし、関節内下方に溜まることで、膝関節のクッション作用が低下し、荷重した際に痛みが出現するというものです。
膝OAの方は膝関節が変形することで関節腔が狭小化してきます。この狭小化に伴って、循環不全が生じてしまうと言われています。
歩き出してしまえば、滑液の循環が始まるので、痛みが落ち着いてきます。
さらに、滑液は関節運動や荷重刺激が入ることで産生される物質ですので、長時間の座位や臥床を続けていると、滑液が十分に産生されず、より膝関節痛を出してしまうと言われています。
一方では、膝蓋大腿関節のロッキングにより、膝蓋下脂肪体にストレスが生じ、痛みにつながったとされています。
たしかに、膝蓋下脂肪体は、膝関節の中でも一番に痛みを感じる組織です。膝OAの方は膝蓋下脂肪体の滑走性低下を生じているパターンが多いので、この説は正しいと思います。
ですが、そのほかにも、筋協調性障害による影響もあるのではないかと考えています。
歩行始め、立ち上がり動作では、静止→動作になるため、膝関節からの感覚フィードバックが正常でないと筋の協調性にイレギュラーが生じてしまい、膝関節周囲筋の過剰収縮or収縮遅延により、関節構成体に負担がかかるのでないかと考えています。
じゃあどうすれば良いのか?
上記3説の可能性があると考えながら、1つ1つ評価することが大切だと思います。
1つ目の説では、動作開始前に滑液の循環を良くするように、一旦非荷重下で関節を行い、滑液の循環を促してから、動作を開始してもらう。
この時に痛みの程度が軽減したのであれば、1つ目の説が有力かもしれません。
2つ目の説では、膝蓋下脂肪体の影響と考えているため、膝蓋腱の後方に位置する膝蓋下脂肪体をリリースし、滑走性を高めた上で動作してもらう。
この時に痛みの程度が軽減したのであれば、2つ目の説が有力かもしれません。
3つ目の説では、筋の協調性が障害されていると考えているので、膝全面・後面筋の収縮を入れていきます。評価として、大腿四頭筋とハムストリングスの求心性収縮・遠心性収縮・等尺性収縮のどれがコントロール困難なのかを把握して、問題点になった筋に対して、問題の収縮様式を練習してから運動してもらう。
この時に痛みの程度が軽減したのであれば、3つ目の説が有力かもしれません。
このように上記3つの可能性を確認するという視点を持つことで、膝の痛みの原因が見えてくるかもしれません。
また、上記以外のイレギュラーを発見できるかもしれません。
まとめ
上記3説でどの説が有力なのかを臨床では判断しながら取り組んでほしいです。
もちろん人間には確実なことは存在しないので、あくまでも可能性の1つということは忘れないでください。
この記事が皆様の臨床に役立てれば、幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。